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No.6451
なぜ日銀は無謀なインフレ政策をとるのか 「インフレが全てを解決する」のは幻想である
東洋経済ONLINE2016.7.26.(4月2日付)小幡 績 :慶應義塾大学准教授

         
注目の日銀金融政策決定会合は28・29日。黒田日銀総裁の戦術に注目が集まるが、そもそもなぜ日銀は危険なリスクを取ってインフレにする必要があるのか。政治的な「アベノミクス論争」の前に、それが置き去りにされている(写真:ロイター/アフロ)

アベノミクス論争はもうやめよう。必要なのは、真の経済学論争である。

巷のアベノミクス批判、あるいは支持は、政治的な論争であり、われわれ経済学者とは関係がないだけでなく、経済学に対する不信を招き、本来行うべき 経済学の論争の機会を失ってしまっている。またこうした形だけの経済政策論争は、政治的な論争、さらに悪いことに、似非(えせ)経済学者の売名行為、社会 的地位獲得のための争いとなってしまう。これらは、アベノミクスがもたらした経済政策アリーナにおける最大の罪であろう。

実質的にわれわれが議論すべきは、もちろん金融政策、クロダノミクスである。黒田東彦・日銀総裁のサプライズ戦略――これは市場を驚かせて、市場で の中央銀行と投機家のゲームをリードし、完全に彼らを支配することによって、前半戦は黒田氏が圧勝した。これが前日銀総裁の白川氏が唯一できなかったこと である。ただ、前半勝ちすぎたために、後半は投機家たちの逆襲を呼び、苦しくなり始めたというのが現在であろう。

■問題の東大「渡辺論文」の中身とは?

しかし、ここで重要なのは、黒田氏の戦術ではなく、その根本的な思想である。なぜ、インフレにしなければならないのか。ここを避けては通れない。い や、これこそが、現在、経済学において論争すべき最大のポイントなのである。そして今日の論争のターゲットは黒田氏ではなく、渡辺努・東京大学教授だ。

渡辺教授は7月25日付日本経済新聞の経済教室で、「物価はなぜ上がらないのか」、というテーマに対して、企業の価格据え置き慣行がその要因である とし、これを脱却することが最重要だと述べている。そして、この慣行、「ノルム」の形成に影響を与えたのがこの20年のデフレであり、これを放置した日銀 の金融政策に問題があるとし、したがって、日銀は、このノルムを破壊するために、何かをする必要があり、具体的には、政府と日銀が2013年1月に結んだ 政策協定(アコード)を見直し、日銀の政策目標をインフレターゲットではなく賃金ターゲティングに切り替えよ、と主張している。

渡辺教授の賃金ターゲットは彼のここ数年の主張であり、私は、コントロールできないものを目標とするには問題があるという点で、強く反対する。

しかし、それよりも問題なのは、渡辺教授が、なぜノルム、企業の慣行を壊す必要があるのか、説明した中身にある。これこそが、われわれがいま論争すべきことだ。

デフレはなぜ悪いか。デフレは企業の価格支配力を弱める。企業の価格支配力が弱まると、コスト削減以外の生産性向上のインセンティブが弱くなる。 よってイノベーションなどがおきなくなり、経済の活力が低下する。だから、デフレは経済を低迷させる。よってデフレ脱却は非常に重要だ、ということであ る。さらに、この価格据え置きのノルムは、世界全体の生産性向上による部分もあるが、金融政策が影響を与えた部分もあるはずで、これが重大な問題だと主張 している。

■渡辺教授の論旨は一見明快だが・・

渡辺教授の一連の研究の集大成ともいうべき議論であり、その研究成果は素晴らしい。しかし、ここで問題なのは、企業の価格設定慣行のノルムを打ち破 るために、日銀があらゆるコストを払ってインフレを起こすべきなのか、そして、ノルム打破が日銀に可能なのか、金融政策に可能なのか、ということである。

渡辺教授は、自ら作り出した日次でほぼリアルタイムに追える価格指数の動きや彼の多数の他の研究を背景に、モノの価格においては、すでにデフレを脱 却しており、2%インフレ水準に相当するところまで価格は十分に上昇しており、足りないのはサービス価格の変動であると分析している。

したがって、物価を上昇させるには、サービスの価格が上がらなくてはならず、これが上げられないのは、サービスセクターの企業のノルムであるよう だ、という分析も彼はしている。そして、この背景には賃金が上昇しないという問題がある。だから、サービスセクターにも価格上昇が波及するように賃金を上 昇させるべきだ、というのが渡辺教授の主張である。

ここで2つ論点がある。

インフレになれば、企業のイノベーションが起こるのか。正確に言えば、デフレーションは企業のイノベーションを妨げるのか。前者は明らかな間違いであるが、後者の問題が存在するというのが渡辺教授の主張である。しかし、私は、それは誤りだと考える。

■デフレとイノベーションは無関係

なぜなら、経済全体が平均的な価格停滞に覆われていても、イノベーションは次々に起きているからである。任天堂のポケモンGOはデフレとは無関係で あるし、アマゾンの隆盛はむしろデフレ的な世界であるから起きていることであり、またアップルはイノベーションを実現し、価格支配力も高いが、しかし、投 資に対しては極めて慎重で、財務リスクはほとんど取っていない。ユニクロ(ファーストリテイリング)のイノベーションについてはいまさら言うまでもない。

さらに、「ほとんどのイノベーションは、既存企業からは起きない」という現実を踏まえれば、既存の企業がノルムに縛られている状態こそ、イノベー ションのチャンスなのである。消費者が潜在的に革新を求めているのであれば、既存の消費者の表面的なニーズに囚われている既存企業を打破するチャンスが新 興企業に訪れるのである。まさに、クリステンセン(経営学者)の言うイノベーションのジレンマの状況であり、これこそが典型的なイノベーションの構造なの である。したがって、デフレとイノベーションは無関係である。

第2に、企業が価格支配力を高めれば、イノベーションを起こして、高くても良い製品を作ろうとするのであろうか。その割合は極めて低い。価格支配力が高くなれば、良い製品でなくても高い価格を付けられる。

アップルも価格支配力が高まりすぎて、イノベーションを起こさずに価格だけ高く維持をした結果、利益は増大し続けてきたが、イノベーションは止まっ た。渡辺教授も価格支配力が高すぎるのは良くない、1970年代のインフレは企業がコスト削減に無頓着になった結果だと述べているが、それ以上にイノベー ションを阻害するのである。

この2つの点の議論から、企業が価格支配力を持ち、適度なインフレである方がイノベーションが起こりやすいということはなく、むしろイノベーションを阻害する、というのが私の考えである。これは渡辺教授と正反対である。

もちろん、どちらの考え方もあり得る。だからこそ重要なのは、どちらの考えもあり得るにもかかわらず、イノベーションを起こすために、中央銀行が無 理矢理、非伝統的な政策をとり、金融市場におけるリスクを極端に増大させてまで金融緩和を拡大し続ける必要があるのか、ということである。

■日本が間違っているのではなく、他国が間違っている

なぜ、現状のノルムが経済にマイナスと判断できるのか。デフレに陥ったのは日本だけで国債の金利低下は日本だけかと思いきや、これは世界的な現象であり、日本はむしろ課題先進国と言われるように、より新しい現実を先に捉えに行っているのではないか。

これこそが新しい現実で、不都合な現実を受け入れたくないためだけに、無理な金融政策を行うのは誤りではないか。この20年がおかしかった、というよりも、この20年の現実は真実であり、この新しい現実を踏まえて金融政策は行うべきではないか。

そして、どちらが正しいか判断できないならば、金融緩和は十分に行っているのであるから、インフレ率が2%ではなく、0%から1%であるためだけに、たかだか1%インフレ率を上げるためだけに、大きなリスクを払って賭けに出る理由はないのではないか。

日本だけがインフレ率2%の目標を下げてしまうと、日本だけ円高になってしまうと渡辺教授は言う。だが、それは他の国の2%の目標が間違っているか らである。もちろん、金融市場というのは間違っている多数派に合わせなければいけない、という事実はあるかもしれない。だが、欧米も2%が達成できず、近 い将来1%に下げるべきときがくるのではないか。

これは、まさに、サマーズ・ハーバード教授と、ゴードン教授の「セキュラースタグネーション論争」である。つまり、永続的な成長率の低下が米国をは じめ世界経済を覆うようになっているが、この理由が需要不足であり、いまこそ需要増大政策を取らなければならないというのがサマーズ教授の主張だ。一方、 ゴードン教授は世界的な生産性革命の時代が終わり、生産性上昇が望めない中、受け入れざるを得ない現実だとする。いずれが正しいのか、この論争とも繋がる のである。

日本経済新聞の翌日7月26日付の経済教室は、奇しくも日本銀行の元理事の早川英男氏が「物価はなぜ上がらないのか」について、金融政策の問題では ないという意見を述べている。彼は、供給サイドに問題があると考え、その点でサマーズ教授の議論には反対であり、供給力を上げることが必要だと主張してい る。

奇しくも、早川氏、渡辺教授、筆者は、大学で同じゼミに属し、指導教官を共有し、また、私が就職活動で日銀に行ったときの1番目、2番目の面接担当 者だった。今後、さらに論争を続けて、本質的な経済政策論争を発展させていきたいと思う。今日は、その第一弾、私の宣戦布告であり、それは渡辺教授に対す るものではなく、売名行為的な政策論争、日本経済を傷める政策論争に対する戦いである。傍線引用:吉田祐起

ヨシダブログ:もともと、ヨシダはアベノミクスに相乗り か同調かは別にして、日銀が万能選手に成り得るといったムードが蔓延したことを苦々しく皮肉ってきたヨシダです。日銀総裁にそんな大きな力があるんです か!? がその裏返しです(でした)▼輪転機で万円札をジャンジャン印刷して市場に投入。挙句の果ては「その印刷して市場にばら撒いた巨額の万円札の行方は『ブラックホール』だったげな・・・」とまで皮肉りました▼冒頭の「・・・そもそもなぜ日銀は危険なリスクを取ってインフレにする必要があるのか。政治的な「アベノミクス論争」の前に、それが置き去りにされている・・・」に共感します。つまり、日銀にとっては越権行為とも言える出しゃばり政策のゴリ押しです。黒田総裁の名誉欲の裏返しとでも皮肉ります▼日銀の金融政策に対する「過信」をヨシダは早くから指摘していたからです。日銀の政策・舵取りひとつで、デフレにピリオッド が打てるとか、逆にインフレ誘導が自由自在に可能ならば、世に不景気という言葉は存在しないと考えるからです。もう一歩突っ込んだことをブログすれば、 「黒田総裁さん、手品師とでも思ってらっしゃるんでしょうか!?」です。こんな大それたブログをしてきたには、60余年間の経営者人生で培った「ジョウシキ」に過ぎません。直感、と表現したほうがイイでしょう▼前任の白川さんは今時どんなご感想を持たれているか知りたいものですね。当初からヨシダは白川さん の心情に言及してきたものです。白川さんの後任者金融政策をどう思っていらっしゃるだろうか、と▼多弁ならぬ、多ブロを避ける意味で、そういったド素人ヨシダの考え(日銀政策一つでリフレ政策可能か?)を確認すべくグー グルにインプットしたのが「リフレ政策は過去日本以外の国で成功した例があるのか?」 です。ヨシダのド素人考えも満更でないぞ~と感じます。本欄で中身をすべて紹介したいほど極めて明快かつ説得力ある言葉です。全文を本欄に紹介しかけて、 長文に過ぎるので断念してリンクに換えます。黒田さんや総理にも読んでもらいたいものとすら皮肉ります▼末尾の本記事筆者の弁に痛快感すら覚えるのがヨシ ダです、曰く、「今後、さらに論争を続けて、本質的な経済政策論争を発展させ ていきたいと思う。今日は、その第一弾、私の宣戦布告であり、それは渡辺教授に対す るものではなく、売名行為的な政策論争、日本経済を傷める政策論争に対する戦いである。」と▼「中見出し」は、■問題の東大「渡辺論文」の中身とは?、■ 渡辺教授の論旨は一見明快だが・・、■デフレとイノベーションは無関係、■日本が間違っているのではなく、他国が間違っている・・・と続きます。写真19枚添付ファイル
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