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No.6406
ドイツはEUを「監獄」のようにしてはならない 
英国を離脱させてしまったEUの問題点とは?
東洋経済ONLINE2016.7.2.唐鎌大輔 :みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

        
  EU首脳会議の2日目は、英国抜きで議論された。EU、ユーロ圏は求心力を維持でき     るのか。ドイツ、メルケル首相の決断にかかっている(写真:ロイター/アフロ)

国際金融市場を揺るがせた英国のEU(欧州連合)離脱(Brexit)決定から1週間が経過した。6月28~29日に開催されたEU首脳会議では、 初日こそ英国のEU離脱時期に関する話し合いが28か国で行われたものの、2日目となる29日は英国抜きの27か国で議論が行われた。英国抜きのEUが動 き出した歴史的な日でもある。
                  
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初日会合では、離脱通知は9月以降に先送りする方針で合意されている。キャメロン英首相が9月に辞任し、9月9日に後任が確定するというスケジュー ルのため、もはやキャメロン首相とEUが交渉する意味はなく、先送りは不可抗力だ。だが、これが英国がEUへ通す最後のわがままとなるかもしれない。採択 された共同声明では「(通知は)可能な限り早く行われるべし。通知前のあらゆる交渉は有り得ない」と明記され、「早く出ていけ。問答は無用」というメッ セージがクリアに示されている。

次回のEU首脳会議は27か国で、9月16日、ブラチスラバ(スロバキア)で実施されるが、その頃には新しい英首相とEUが既に顔合わせを済ませているだろう。

                          唐鎌 大輔
              唐鎌 大輔(からかま だいすけ) Daisuke Karakama
                 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究セ ンターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU 経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)国際為替部で為替 市場を中心とする経済・金融分析を担当。近著に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社刊)

■「脱走者」と形容された英国

なお、上記の声明文からでも十分伝わるが、離脱決定から1週間で見られた、EU高官の発言を見ると、メルケル独首相は「(Brexitの)決定を覆 す道はないと断言したい」、「離脱を望む国は、特典を維持しながら責任を回避できると期待すべきではない」と述べ、ユンケル欧州委員会委員長は「脱走者が 歓迎されることはない」と英国を脱走者と表現した。筆者の事前想定通り、EUは離脱ドミノへのけん制という意味から、極力英国には「見せしめ」になって欲しいというスタンスを貫きそうである。

ちなみに国民投票自体に法的拘束力はなく、制度上は政府も議会も決定を無視できるという解釈に立って再投票を求めるムードがあることも取り沙汰され ている。しかし、EU首脳会議後、キャメロン首相が「後悔していない。英国民の判断は受け入れられなければならない」と述べ、メルケル首相も上述のように 「断言」していることを見るにつけ、その可能性はほぼゼロなのだと思わざるを得ない。

そもそも本気で離脱票に投じた層には、結果が出て怖くなったから国民投票をやり直すという行為自体が民主主義に対する愚弄と映るはず。Brexit の本質的なテーマが、ブリュッセル(≒EU本部≒欧州委員会)から「自分たちの民主主義」を取り戻すことであった点を踏まえれば、国民投票の無視は本末転 倒である。希望的観測として一縷の望みを抱く気持ちは正直筆者にもあるが、期待すべきものではないのだろう。

離脱が覆らないとの前提に立てば、今後、両者の「新たな関係」構築に向けて対英交渉に臨むEUはこれまでの優柔不断で決定力に欠けるEUとは一味違 うはずだ。EUはギリシャも、アイルランドも、ポルトガルも、キプロスも、危ない時には不承不承ながらも必ず助けてきた。それは彼らがEUの一員であり、 また共通通貨圏の一員でもあったからだ。EUでも共通通貨圏でもなく、しかも発足以来手心を加えてきた相手から恩を仇で返されて、よい気分がするはずがな い。ユンケル欧州委員会委員長の「脱走者」という比喩がEUの本問題に対する基本認識を最も端的に表している。

両者の「新たな関係」を巡る交渉は新たな英首相の下で9月以降に行われることになるが、残された選択肢はほぼ見えている。結局は英国がEUからいか にメリットを分けてもらうかしか争点はなく、EUは常に優位な目線から交渉を進めるだろう。英国から何か差し出せるものがあれば、交渉も一進一退の様相を 呈しようが、両者の実力が伯仲していない以上、「交渉」というよりも英国からEUへの「懇願」にしかならない。

■「奥の手」まで使ってしまった英国

こうしてみると英国とギリシャの違いを感じずにはいられない。国内銀行部門が青息吐息になりながらもギリシャが今でもEUやIMF(国際通貨基金) に対してぶしつけな態度を取れるのは、「ユーロ圏からの離脱」というカードを持っているからである。英国も「EUからの離脱」というカードを持っているう ちは、2月に合意したEU改革案に代表されるように自己主張を通すことができた。だが、このカードはもうない。現状の英国とギリシャの立ち位置を比べる と、「奥の手」は最後まで見せてはならず、見せるならばさらに「奥の手」を持たなければならないという交渉の本質がよく分かる。

                     
          筆者が2014年にEUとユーロの構造を分析し、未来を予測した著書

「BrexitはRegrexit(後悔の離脱)」という言葉も流布し始めているように、離脱派には勝利した後の青写真がなく「奥の手」はなかっ た。それどころか事前に提示してきた離脱後の公約を早くも撤回する動きすら見られ始めた。交渉によって英国が得られる果実はあまり期待が持てそうにない。

結局、キャメロン首相が党内の支持基盤固めのために国民投票へ打って出たことは、超ハイリスク・ローリターンのギャンブルに過ぎなかった。仮に残留 派が勝っても、これほど世論が分断していることを明らかにしてしまっては、それによって支持基盤が固まったのかどうか怪しい。そう考えると、そもそも賭け として成立すらしていなかったようにも思えてくる。

よく指摘されているように、そもそも英国がEUに入ったのは経済的恩恵を被るためであり、政治統合の理想までを共有していたわけではなかった。EU の前身となる欧州共同体(EC)に加盟申請を行い、実際に加盟した1960~70年初頭は、英国病と揶揄されるほど同国の景気が低迷していた時代であり、 欧州との連携強化が景気の底上げに寄与するとの思いがあったといわれている。だからこそ、1975年に実施されたEC残留の是非を問う国民投票では残留派 が離脱派にダブルスコア(残留:67.2%、離脱:32.8%)で勝利することができた。

                

具体的には、加盟や国民投票があった1970年初頭から半ばにかけては1人当たり名目GDPで見たEUと英国の経済格差は史上類を見ないほど拡大し ていた。経済的メリットを念頭に欧州の一員に残るという選択は至極妥当な結論だったといえる。こうした「EU>英国」という構図は1997年頃に至るまで は辛うじて維持された。

だが、2000年を手前にしてこの両者の関係は逆転し、今日に至るまで「英国>EU」の構図が定着するようになった。この間、欧州債務危機を経て、 欧州安定メカニズム(ESM)や欧州銀行同盟など大掛かりな汎欧州的枠組みが次々と生まれ、必然的にブリュッセルやフランクフルトがEUの経済・金融政策 において一段とプレゼンスを拡大した。これが英国の不満につながった側面もある。

■荒稼ぎする異形のドイツ、還元をしないのか

                

こうした状況と並行して、ドイツはユーロというドイツにとっての「永遠の割安通貨」によって荒稼ぎを続け、中国を追い抜き世界最大の経常黒字国となった。

現状、ドイツ経済の貯蓄・投資(IS)バランスは国内部門が全て貯蓄過剰という異形を実現している。端的にいって、外需を貪ることで景気が下支えら れているのである。ドイツ企業の優れた技術力のみならず、弱い国を駆け込むことによって実現した安い通貨ユーロが競争力を高めるドライバーになったことは 疑いようがない。

問題は、これを周縁国に還元するような姿勢が今に至るまでまったく見られていないことである。理想的にはユーロ圏共同債のような装置を介した「持て る国」から「持てない国」への積極的な所得再配分が求められるが、現状では共同債に関する議論など半永久的に棚上げされている。一足飛びにこうした財政統 合への道が難しいにしても、ドイツの緊縮路線(≒過剰な経常黒字)は既に欧州を超えてG20などの国際会議の場でも世界経済を不安定化させる要因として批 判され始めており、何らかの対応策が求められる状況にある。

せめて安定・成長協定(SGP)や財政協定に代表される機械的なEUの財政規律を柔軟に運用するよう、方針を見直すことについて、ドイツにはリー ダーシップを発揮する義務があると筆者は思う。ECBが非伝統的な金融政策によって金利を抑制し、「時間稼ぎ」をしている今だからこそこうした対応は可能 ともいえる。また、欧州系金融機関の体力を奪い続ける過度な資本規制やマイナス金利政策なども見直すことに価値はあろう。今回、離脱派が主張するメリット の中に「EUの過度な規制に縛られず、緩和的な規制を設けることで資本を引きつけられる」といった類の声があった。これは一面では真実に思われる。

メルケル首相が言うように、もう英国は戻ってこない。これからEUが考えるべきことは脱走者を罵倒するだけではなく(それもEUを支えるために、ある程度は必要な政治パフォーマンスではあるが)、追随する脱走者を出さないような環境作りである。

■ドイツ流の押しつけでなく、多様性の容認を

そのためにはドイツの意識改革が重要になる。ドイツのような規律正しさやその結果としての内需過小な状態をほかの加盟国にも押しつければ、ユーロ圏 を主体とするEU統合プロジェクトは、一部の国々にとって脱走したくなるほど辛い「監獄」での「しばき上げ」でしかなくなってしまう。あくまで「ドイツが ドイツらしくいられるのはほかの国がドイツではないから」という事実を再度認識した上で、統合戦略の練り直しが必要であろう。

必然的に、今後の統合の進め方は変わっていくことになるはすだ。ショイブレ独財務相は英国民投票の前に「あるEU加盟国の一部の人は6月23日に間 違った決定(≒離脱)が下された場合、EUへの権限移行を強化すべきだと考えているが、ほかの加盟国の人達はそれはとんでもないと言うだろう。教訓を学ん でいないのだろうか(6月13日、ブルームバーグ)」と述べた。要するに、従前の統合方式を見直した上で、ついて来られる国とそうでない国を切り分けてプ ロジェクトを進める必要性があるという認識である。

これは例えば、ドイツやフランスなどのコア国が先行して通貨統合を超える財政・政治統合を目指す「2速度式欧州」ないし「マルチ・スピード欧州」な どと表現されることがある。また、各国が参加したい統合分野だけに限定し、部分的な離脱も可能にするアラカルト方式を求める声も見られている。一口にEU といっても、通貨ユーロ、欧州銀行同盟、財政協定、シェンゲン協定など様々な参加メニューがあって、自由な選択が許されるという運営である。

2000年代以降、「拡大」と「深化」を順当に進めてきたEU政策当局からすれば屈辱的な路線変更かもしれないが、2人目の脱走者を出さないために は、現状の「監獄」にも喩えられる環境を相応に緩和してあげるような複眼的な戦略が必要になってくる。そうした方向性はEUの「多様性の中の統一 (Unity in diversity)」という理念にも合致する。傍線引用:吉田祐起

ヨシダブログ:長文の記事です。下手なブログは抜きにして一刻でも早くに掲載します▼「中見出し」は、■「脱走者」と形容された英国、■「奥の手」まで使ってしまった英国、■荒稼ぎする異形のドイツ、還元をしないのか、■ドイツ流の押しつけでなく、多様性の容認を・・・と続きます。(写真10枚添付ファイル
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